雲模様
早い夕方のことです。
今日の空は清々しい青。雲は無いよりあった方がいい。
夏のこの時間は好きでした。
陽の高い日中の殺人的な暑さは、いくらか 鳴りをひそめ、
吸い込む空気も体に馴染む気がしました。
しかし、陽は傾いてはいても、まだまだ白く強い光を放っています。
晴れの空に様々な形の雲が競うように浮かびます。
本当は違う高さにあるのに、隣り合っているように見える雲。
うすく剥がした綿菓子のような雲。
今日の空は高い。
上空は風が強いとみえて、いくつかの古い飛行機雲が風に流され、
乾きかけのインクの線を手で擦ってしまった痕のようになっていました。
さほど遠くない山の向こうからは、落ちてくる陽を捕えたいと言わんばかりに
積乱雲がじわじわと大きく育っています。
強い陽光に照らされて生まれる雲のコントラストは、
いつも心に何かを突き刺します。
手では触れることも出来ないものなのに、あの存在感は何なのでしょう。
首を反らせて真上に目をやると、
海側の空から、真新しい飛行機雲が一筋、
威圧的に膨れ上がった積乱雲に向かい、緩い弧を描いて伸びていました。
まるで、煙をあげる敵陣に飛び込んでいく特攻の戦闘機のように。
思わぬイメージが脳裏によぎり
望む景色がうら寂しい色に変わってしまいました。
夏だからでしょうか。
ありがとうございました。些かお恥ずかしゅうございます。